相続で発生した不動産登記は司法書士に依頼するべき?それとも自分で登記できる?

不動産

略歴
立命館大学卒業2011年、税理士登録。税理士登録番号は118275。2012年 東京都港区益本公認会計士事務所(現税理士法人総和)にて資産税対策専任。2015年 千葉県税理士会登録。千葉県税理士会松戸支部広報部員。

主な取扱分野
相続税対策 / 資産税対策 / 税務申告業務 / 法人保険 / 会社設立 / キャッシュフロー対策 / 事業承継 / 宅建主任者

相続では、相続税は税理士に、遺産分割協議書など権利書類は行政書士に、争族などで揉め事に発展した場合は弁護士など、内容によって依頼する専門家が異なりますが、不動産登記の場合は、司法書士に依頼をします。

ただし、上記の手続き含め、不動産の登記についても、専門家に依頼せず自分で行うことも可能です。

本項では「どのような場合に司法書士に依頼すれば良いのか?」「依頼した時の費用感は?」などについて、解説致します。

1.依頼した方がいいパターン

不動産を相続したら相続登記をします。

相続登記は相続した不動産を管轄する法務局で行いますが、ご自身で登記申請することも可能です。

しかし、仕事をしていたり、管轄の法務局が遠方であったりなどの理由でご自身で登記申請をする時間を確保できないような場合には、登記のプロである司法書士に依頼することもできます。

また、司法書士に依頼するのは時間的な理由だけではありません。基本的な相続登記であれば、ご自身で時間をかけて調べながら登記することは可能ですが、イレギュラーな相続登記を申請する場合は、司法書士に依頼するのがいいでしょう。詳しく説明します。

相続登記における、イレギュラーなパターンとは?

「イレギュラーなパターン」とはどのような場合を言うのかについてですが、これにはいろいろなケースが想定されます。

全てのケースをご紹介すると長くなりますので、簡単に一言で言うとするならば、”専門性が高いもの”です。

ご自身で相続登記をする場合は、登記申請の方法について、法務局で相談することもできますので、時間をかけることができるのであれば、どのような登記も可能と言えば可能です。

ですが、法務局で相談できるのは「登記の申請について」です。ご自身で行おうとしている登記が法律的に不都合な点がないかどうかの相談はできません。

一方、司法書士は登記を扱う業務を中心としていますが、決して登記だけの専門家ではありません。広く法律の専門家です。

司法書士であれば、登記の相談にとどまらず、登記を前提とした法律相談も可能です。どのような相続をしたらいいのか、遺産分割協議書の文言に不利になるようなものはないか、などの確認までしてくれます。

一度相続登記がされてしまうと、それを覆すにはかなり面倒なことになりますので、遺産分割の内容等で少しでも疑問に思うことがあれば、司法書士に相談することをおすすめします。

なお、具体的に、以下の場合には専門性が高いものですので、司法書士への相談を検討すると良いでしょう。

1.何世代にも渡って相続登記が放置されている場合

相続登記には期限が無いため、自分の親の親、そのまた親、と何世代にも渡って相続登記が放置されている場合が稀にあります。

この場合は、そもそも相続人が誰なのか分からないという問題も起きます。何十通もの戸籍謄本等を収集して、その戸籍謄本等を読み解くと、一度も会ったことのないような遠い親戚と一緒に相続人になっているということもあり得ます。

収集する戸籍謄本等が多くなることや、相続関係が複雑になりますので、この対応を法務局で相談しただけでは中々解決しないでしょう。この場合は、司法書士に依頼した方が良いケースだと言えます。

2.遺産分割の内容が換価分割や代償分割の場合

換価分割とは、相続した不動産を売却して売却代金を相続人間で分配する遺産分割方法です。

また、代償分割とは、ある相続人が不動産を相続することを引き換えに、他の相続人へ対価を渡す遺産分割方法です。

これらの遺産分割は通常の遺産分割と異なり、税務上の問題が発生しやすいので、専門性が高く司法書士に依頼した方が良いケースだと言えます。

3.権利関係が特殊な場合

相続登記と言えば、親の所有していた建物や土地を相続するなど、不動産の所有権を相続することを想像されるかと思いますが、その不動産が

「田んぼや畑だったら?」
「権利が私道の共有持分だったら?」
「所有権ではなく地上権や賃借権だったら?」

など、色々な相続のケースがあります。

これらの問題をご自身で全て調べ上げて相続登記するのは中々骨の折れることです。

また、抵当権や仮登記などの担保権が登記されているなど、権利関係が複雑な場合も専門性が高く司法書士に依頼した方が良いケースだと言えます。

4.相続登記を急ぐ場合

何らかの事情によって、相続登記を急ぐことがあります。

相続した不動産をすぐに売却する予定がある場合や、遺産分割協議や遺言書の内容を登記に反映させて速やかに権利を保全したい場合など、相続登記を急ぎたいと考える場合は正しい登記を確実に実行するべきですので、司法書士へ依頼するのがいいでしょう。

5.その他

上記の他にも司法書士へ依頼したほうがいい場合はあります。

ご自身で相続登記をして、万が一間違った登記をしてしまっても、登記をやり直せばいいのですが、やり直しをするためには各相続人に再度印鑑を押してもらう必要があるなどでトラブルに発展してしまい、やり直しが困難となるケースもあります。

司法書士へ依頼すればその分の費用がかかってしまいますが、相続登記を確実に速やかに実行するには必要な費用といえます。

ご自身で登記するのに不安なことがあれば司法書士へ依頼することをおすすめします。


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2.費用の相場について

司法書士に依頼すれば登記は確実に実行してもらえるとはいえ、司法書士に相続登記を依頼するとなると、やはり一番気になるのは費用だと思います。

「専門家に頼むと安心だけど、費用が勿体無いから自分でやる」と言う考えをお持ちの方も多いでしょう。

そこで司法書士に相続登記を依頼した場合の費用について、ご自身で相続登記したときと比較しながら説明していきます。

実費について

相続登記を司法書士へ依頼したときにかかる費用には、「実費」「報酬」があります。

実費

実費とは、相続登記をするために必要な戸籍謄本等を取得するための手数料や、相続登記の際に納付する登録免許税をいいます。

前者の戸籍謄本等の取得にかかる手数料は、以下のとおり1通あたりは数百円ですが、書類を何十通も取得する必要があったり、取得のための郵送代や交通費がかかったりと、トータルすると1万円程度、多いときには3万円程かかることもあります。

※なお、郵送で戸籍謄本等を取得する場合は、郵便局で購入する「定額小為替」を使用しますが、こちらの発行手数料として1枚100円かかります。

 

また、相続登記の際に納付する登録免許税は、下記計算式で計算されます。

こちらは不動産によって価格が異なりますが、仮に評価額が2000万円の不動産について相続登記をするときは、登録免許税は8万円と計算されます。

[不動産の評価額]×0.4%(4/1000)

(端数処理)

  •  不動産の評価額は、評価証明書に記載されている価格
  •  不動産の評価額の1,000円未満の端数は切り捨ててから0.4%を乗じる
  •  0.4%を乗じて計算した金額に100円未満の端数があるときは切り捨てる
  •  計算した登録免許税が1,000円未満のときは、登録免許税は1,000円となる

報酬について(一般的な価格帯)

次に、司法書士の報酬について説明します。まずは下記の表をご覧ください。

これは、平成30年に日本司法書士連合会が行ったアンケートの結果を引用したものです。

※相続を原因とする土地1筆及び建物1棟(固定資産評価額の合計1000万円)の所有権移転登記手続の代理業務を受任し、戸籍謄本等5通の交付請求、登記原因証明情報(遺産分割協議書及び相続関係説明図)の作成及び登記申請の代理をした場合

このアンケートの結果によれば全国平均で約7万円という結果になっています。

前提条件がシンプルなものになっていますので、実際の相続案件での報酬額はもう少し高くなることが予想されます。

アンケートの結果からすれば、司法書士の報酬額が10万円程度であれば一般的な金額といえるでしょう。

司法書士報酬が高くなりそうなケース

10万円程度の報酬額であれば一般的な報酬額といえますが、どのような場合であってもその金額が目安になるわけではありません。

司法書士の報酬が高くなる場合があります。

  • 手続きや登記申請が複数ある
  • 権利関係が複雑な場合(下記参照)

には高くなっても仕方ないといえます。

もちろん、下記は一例に過ぎませんが、その他の理由で報酬額が加算されることもあります。

  1. 裁判所の手続きも一緒に依頼する場合(遺言書の検認が必要な場合や、相続放棄をする相続人がいる場合など)
  2. 何世代にも渡って相続登記を放置していた場合
  3. 相続登記と一緒に抵当権抹消登記をする場合や、相続登記申請を複数の法務局へする必要がある場合など、登記申請が複数に渡る場合
  4. 戸籍謄本等を収集していた際に、他の相続人が見つかった場合
  5. 被相続人の登記簿上の住所地が古く、権利証も見つからない場合

自分で申請した場合との比較

上記の実費と報酬のうち、実費については、司法書士に依頼せずに、ご自身で相続登記をする際にもかかる費用です。

司法書士に依頼したからといって割高になったり割引になったりすることはありません。

ですので、司法書士へ相続登記を依頼して30万円請求されたという場合であっても、そのうちの20万円程は実費で、ご自身で相続登記をされても発生する費用ということになります。

結論として、相続登記をご自身でされる場合の費用と、司法書士へ依頼する場合の費用の違いは、司法書士の報酬だけということになります。


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3.司法書士の選び方

全国にはたくさんの司法書士事務所がありますが、上記で説明した報酬についてはそれぞれ異なります。

できれば報酬が安い司法書士を選びたいですよね。ですが、司法書士を選ぶ際に、報酬だけで判断するのは危険です。

報酬だけでなく、他の条件(特に以下の2つの条件)もチェックした上で、どの専門家に依頼するのかを比較検討するべきでしょう。

1.相続に強いかどうかを重要視

司法書士であれば誰でも同じかというと、そうではありません。司法書士にはそれぞれに強みや専門分野がありますので、中には相続登記をほとんど扱ったことがない司法書士もいます。

折角報酬を支払ったのに、時間がかかったり、不動産に登記漏れがあったりしては大変です。

また、遺産分割の方法についてアドバイスを受けたい場合などには、相続手続きに精通している司法書士であれば、ベストなアドバイスが期待できます。

司法書士を選ぶ際には、報酬だけでなく相続に強いかどうかも重要といえます。

2.依頼できる範囲について

相続登記の代行業務では、一般的には申請書類の作成、添付書類の取得から、法務局への登記申請までをワンストップで行うことを指しますが、それらに付随する業務までサービスに組み込まれている場合があったり、逆にそうでない場合があります。

同じような代行サービスでも、厳密にヒアリングすると微妙に依頼できる範囲が異なる場合があるので注意しましょう。

また、基本的には戸籍謄本等の役所で取得する書類の取得代行も依頼できますが、印鑑証明書だけは原則本人でないと取得できませんので、ご自身でする必要があったりします(相続登記に遺産分割協議書を添付する場合のみ)。

また、遺産分割協議に代理で参加して話をまとめるなど、他の相続人と交渉をすることは、司法書士では対応できず、弁護士へ依頼する必要がありますのでご注意下さい。

これらはどの司法書士に依頼しても同じことなので、あらかじめルールとして理解しておくのが良いでしょう。


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まとめ

相続登記を司法書士に依頼することについて解説してきました。

相続では色んなところで費用がかかってしまうと言うことがあるため、費用を抑えるために自分で手続きをしたくなると言う人も多いでしょうが、本項で説明した通り、自分でやる(=専門家のチェックを通さない)と言うことはリスクもあることなので、「単純にお金が高いから」と依頼するのを諦めるのではなく、色々な面を考慮しながら検討するべきでしょう。

略歴
立命館大学卒業2011年、税理士登録。税理士登録番号は118275。2012年 東京都港区益本公認会計士事務所(現税理士法人総和)にて資産税対策専任。2015年 千葉県税理士会登録。千葉県税理士会松戸支部広報部員。

主な取扱分野
相続税対策 / 資産税対策 / 税務申告業務 / 法人保険 / 会社設立 / キャッシュフロー対策 / 事業承継 / 宅建主任者