相続で発生した家の名義変更は、妻(夫)にするべきか?子供にするべきか?税制優遇や控除と合わせて詳しく解説。

不動産

略歴
立命館大学卒業2011年、税理士登録。税理士登録番号は118275。2012年 東京都港区益本公認会計士事務所(現税理士法人総和)にて資産税対策専任。2015年 千葉県税理士会登録。千葉県税理士会松戸支部広報部員。

主な取扱分野
相続税対策 / 資産税対策 / 税務申告業務 / 法人保険 / 会社設立 / キャッシュフロー対策 / 事業承継 / 宅建主任者

 

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1.夫婦間で名義変更が行われるケース

夫婦間での不動産登記の名義変更の方法には、代表的なものとして、

  1. 相続による名義変更
  2. 生前贈与による名義変更
  3. 離婚に伴う財産分与による名義変更

の3つのパターンがあります。

生前に何もしなければ、相続による名義変更ということになりますが、節税対策として生前贈与を選択するケースもあります。また、離婚をすれば夫婦でなくなるため相続することはできませんが、離婚の財産分与という形で名義変更されることもあります。

ここでは上記3パターンの内容や注意すべき点について解説していきますので、いずれかを検討されている方はよく確認して活用してみて下さい。

1.相続による登記(名義変更)

まずは、相続による名義変更についてです。

相続では、不動産に限らず、車や銀行の預金など、あらゆる財産を承継します。後半でも解説しますが、相続によって配偶者が亡くなった方の財産を引き継いだ際には配偶者控除といって、税制上の優遇措置が認められています。

ですが、配偶者控除があるから相続させるのが一番良いとは限りません。誰が相続するのがいいのかは、税金だけで判断するべきではなく、将来的な財産の承継までも視野に入れて検討する必要があります。

相続財産をどのように遺したいかというご自身のお気持ちや、相続人同士の関係などを考慮されるのが良いかもしれません。

2.相続税対策として生前贈与

次に、相続によらずに生前に贈与をした場合についてです。

生前贈与というと贈与税が課税されますので、相続のほうがメリットが大きいのではないかと考えられそうですが、生前贈与の場合も税制上の優遇措置が認められています。こちらについても、記事の後半を読んで頂ければと思います。

なお、生前贈与による不動産の名義変更で気を付けないといけないこととして、持ち戻しというものがあります。

あまり聞き慣れない言葉だと思いますので、持ち戻しについて簡単に説明します。

“持戻しとは?”

持ち戻しとは、相続が開始した際に、原則として生前贈与した財産を持ち戻して相続財産の計算に含めることをいいます。

持ち戻しをすると、生前贈与を受けた相続人は、相続の財産分割の際に、生前贈与で受けた分を控除されてしまうことになりますので、相続時の取り分が減ってしまうことになります。

持ち戻しは、遺言等で持ち戻しを免除する意思表示をすることもできますが、そういった法律を理解して、持ち戻しを免除する意思表示を残していることはほとんどありません。

持ち戻し免除の意思表示がない場合は、生前贈与をしても相続時の取り分が少なくなってしまうだけですので、生前贈与か相続かで大きな違いはないといえます。

生前贈与をする際には、相続時の持ち戻しまで考えてする必要がありますので、上記の内容は理解しておくようにしましょう。

なお、平成30年7月6日に可決された民法改正案では、20年以上連れ添った夫婦間の自宅の生前贈与については、相続時に持ち戻しをしない意思表示があると推定されることになりました。

今後は、配偶者に対して自宅を生前贈与をしても、原則は相続時に持ち戻しせず、相続時の配偶者の取り分が減らないこととなりますので、自宅の生前贈与は利用しやすくなります。

3.離婚に伴い財産分与

相続や生前相続とは状況が異なりますが、夫婦間での不動産の名義変更としては、離婚に伴う財産分与も少なくありません。

離婚をすれば、それまで一緒に生活していた自宅をどうするかという問題が生じます。

財産分与であって、贈与ではありませんので、基本的に贈与税が課税されることはありません。ただし、財産分与とは名ばかりの実質的には贈与と認められるような場合には贈与税が課税されることになりますので注意が必要です。

また、財産分与は離婚が成立してから行うことになりますので、離婚が成立する前に財産分与を理由として不動産の名義変更をすることはできません。離婚成立前に名義変更をすると贈与となってしまいますので、名義変更のタイミングには注意しましょう。

2.夫(妻)が亡くなった時、名義は配偶者か子供どちらが良い?

夫婦間の不動産の名義変更について解説してきましたが、そもそも、夫婦の一方が亡くなった場合には、不動産の名義はもう一方の配偶者に変更するのが本当に一番良いのでしょうか?

実は、配偶者ではなく、子供に名義変更するほうがいいと考えられるケースはあります。

また、最終的に子供にどのように財産を承継していくかまでを考える場合は、かなり複雑なことまで考慮する必要がありますので、場合によっては専門家への相談を検討することもおすすめします。

どちらに名義変更するかはケースバイケース

夫婦の一方が亡くなった時に、不動産の名義を配偶者に変更するのか、子供に変更するのかは一概にどちらが正しいということは決まっているものではありません。

不動産の名義変更についてはどうするのが一番いいのかを十分に検討する必要がありそうです。

それではここで、最終的に不動産を引き継ぐ子供が決まっている場合と、兄弟姉妹間でいわゆる遺産争いが想定される場合について説明します。

引き継ぐ「子」が決まっているケース

最終的に財産を遺したい子供が既に決まっているのであれば、配偶者ではなく、子供に直接相続させるのも選択肢の1つです。

というのも、不動産の登記には登録免許税や、司法書士へ依頼した場合はその報酬などの費用がかかるため、夫から妻、妻から子供、というように一度妻を経由して相続させると、2回分の登記費用がかかってしまいます。

これに対し、夫から直接子供へ相続させた場合は1度の登記で済ませることができます。

ただし、登録免許税は法定相続人なのか、そうでないのかで税率が異なります。そのため、法定相続人以外に遺贈する場合には、必ずしも1度の登記だから安くなるというわけではないので注意しましょう。

2次相続は揉めるケースが多い

夫婦の一方が亡くなって相続が開始し、その後、もう一方の配偶者が亡くなってさらに相続が開始した場合など、この2番目の相続を2次相続と言います。

夫も妻もどちらとも亡くなった後の2次相続では、兄弟姉妹間で誰が相続するかで揉め事に発展するケースが多いです。

したがって、両親のどちらかが生きている間には、不動産の相続について十分に話し合って、予め子供の誰かに相続しておくのも1つの選択手段といえます。

子供へ引き継ぐにはどうするべきか?

最終的に子供にどのように財産を承継していくかまでを考える場合は、相続か、生前贈与か、誰に相続させるかなど、何が最適かは具体的な状況によって異なります。

どういうことか、一例ではありますが、具体例をあげて解説します。

ケーススタディ

  • 夫婦ともに再婚
  • 夫には前妻の子供がいる
  • 妻には前夫との子供がいる

この場合、夫が先に亡くなって、夫の所有していた不動産を妻へ相続によって名義変更したとします。その後、妻が亡くなった際には妻の子供だけが不動産を相続することになります。

反対に、妻が先に亡くなった場合を考えてみます。この場合、妻が亡くなっても夫の所有する不動産の名義変更はありません。そのため、夫が亡くなった際には夫の子供だけが不動産を相続することになります。

いかがでしょうか?こちらの例では、亡くなる順番で全く結論が異なります。

亡くなる順番で結論が左右されますので、相続によらずに、生前贈与を選択することも1つの手段として考えられます。また、こちらでは詳しく解説しませんが、不動産信託を利用する方法もあります。

また、この例においても、最終的にどのようにするのが最適なのかは、結局のところ、本人にしか分からないと思います。子供との関わり合いによっては、自分の子供に財産を遺したいと考えるかもしれませんし、配偶者の子供に財産を遺したいと考えるかもしれません。または、それぞれ平等に遺したいと考えているかもしれません。

上記の例はやや特殊な家族関係ではありますが、上記の例のようなケースに限らず、どのようなケースであっても、最終的にどうしたいかまでをご自身でよく考え、相続で財産を遺すのか、生前贈与をするのかも含めて検討していく必要があります。

3.控除を利用して最適な手段を選択

相続の際には、上記のとおり誰に財産を遺すかということも非常に重要ですが、忘れてはいけないのが税金です。

仮に不動産を子供に相続させたとしても、相続税の額によっては、せっかく相続させた不動産を手放さないといけなくなる可能性もあり得ます。

いかに節税するかで、遺せる財産額が変わってきますので、相続に関する税金には注意が必要です。ここでは2つの控除制度をご紹介します。

1.相続税の配偶者控除を利用

先ほどもご紹介しましたが、相続税においては、配偶者は配偶者控除が使えるため、実際に相続税がかかることはほとんどありません。

この配偶者控除を利用すれば、相続財産に現金が少ない場合であっても、不動産を相続した配偶者には相続税は課税されず、不動産を手放さなくてはいけない状況には陥りにくいです。

これを子供が相続した場合は、子供は配偶者控除を使えませんので、相続税が課税され、不動産を売却せざるを得ない状況に陥る可能性が高くなります。

場合によっては、相続税が課税される子供は現金や換金しやすい財産を中心に相続して相続税を精算し、配偶者は不動産を相続するというのは1つの手段といえます。

ですが、2次相続で配偶者から子供へ不動産を相続し、そこで相続税がかかる可能性が高いので、2次相続まで考えた設計が必要といえます。

2.夫婦間の贈与の特例を利用

相続でなく、生前贈与の場合も、税制上の優遇措置が認められています。

贈与税の配偶者控除のことで、通称おしどり贈与と言われています。相続の配偶者控除とは違い、限定的ではありますが、おしどり夫婦間に認められている贈与となります。

おしどり贈与の条件についての詳しい説明はここでは割愛しますが、ざっくり言うと、おしどり贈与は「20年以上の夫婦間の自宅の贈与」です。

このおしどり贈与を利用すれば、贈与税が課税されることなく、自宅を配偶者に贈与したり、夫婦の共有名義に変更したりすることが可能となります。

相続で不動産を引き継ぐのではなく、生前贈与で不動産の名義変更をしてしまうことで、相続財産が少なくなりますので、節税対策として有効な場合があります。

これを利用して配偶者に贈与するというのも1つの手法といえます。

また、先にご説明したとおり、民法の改正によってより利用しやすくなる制度といえます。

まとめ

家の名義変更の方法について解説してきました。

夫から妻への名義変更のことだけ考えればそれほど複雑なものではありませんが、最終的に誰に財産を引き継ぎたいのかなどまで考えると、かなり複雑なことまで検討する必要がありそうです。

夫婦の財産をどうするのか、場合によっては専門家の意見も取り入れつつ、夫婦でよく検討し、よく話し合うようにしましょう。

略歴
立命館大学卒業2011年、税理士登録。税理士登録番号は118275。2012年 東京都港区益本公認会計士事務所(現税理士法人総和)にて資産税対策専任。2015年 千葉県税理士会登録。千葉県税理士会松戸支部広報部員。

主な取扱分野
相続税対策 / 資産税対策 / 税務申告業務 / 法人保険 / 会社設立 / キャッシュフロー対策 / 事業承継 / 宅建主任者