内縁者(事実上の妻や、愛人)の相続はどうなる?

内縁の妻

略歴
2004年 金沢大学大学院自然科学研究科修了(理学修士)2015年 税理士事務所開業、起業支援会社設立。税理士法人LRパートナーズ等で法人部門に勤務。専門分野は相続税・法人保険・創業支援・法人保険等。特に創業支援に力を入れており、補助金・助成金・融資等の支援を通じて、年間40社を超える会社の操業に携わる。創業補助金は、毎年、年間30社程度採択実績。
主な取扱分野
相続税、事業承継、M&A、法人保険、創業支援、法人保険、補助金、助成金、融資等支援。

 

現在は、結婚に関する意識が大きく変わり、婚姻届を出して法律的に認められた夫婦から、同棲、事実婚などの内縁関係の夫婦、そして愛人関係など様々な関係があります。

相続に関して、婚姻届を出した夫婦、未提出の内縁関係、愛人関係に差があるのでしょうか?本項では、特に内縁関係の妻(夫)の相続上の問題、相続を受けとる方法を解説しましょう。


被相続人=資産を残す人=亡くなった方
相続人=資産を受け継ぐ人=配偶者、子供など


1.内縁とは?内縁と愛人の違いを確認

内縁とは

内縁の妻とは、共に暮らしていて事実上は婚姻関係にあるけれど、婚姻届が提出されていないため、法律上は配偶者としては認められていない妻のことです。

日本では、婚姻届を出すか出さないかは、当事者の自由意思に任されていますが、婚姻届が未提出のせいで、法律上は妻とみなされず、結婚の場合なら優遇される税金・保険・年金などが、内縁関係の場合、優遇されないということがあります。

内縁関係では、法律上、婚姻届を出した夫婦(以下、夫婦)と同等の義務権利が認められている部分と、区別されて認められていない部分があります。以下をご覧ください。

夫婦と同等に認められている項目

● 遺族補償年金を受け取れる配偶者としての権利
● 労働災害の遺族補償を受ける配偶者としての権利
● 退職手当を受ける者としての配偶者の権利

内縁関係には認められていない項目

● 夫婦の同姓
● 成年擬制(せいねんぎせい)(未成年者が結婚することによって成人として扱われること)
● 準正(じゅんせい)(非嫡出子が嫡出子の身分を取得すること)
 配偶者の相続権

ここで注目したいのが、内縁関係には認められていない項目の4番目に記載のある「配偶者の相続権が認められていない」ということです。

つまり、内縁関係にある者は、内縁の夫(妻)が亡くなっても相続することはできないということです。

愛人とは

愛人関係とは何かというと、相手が既婚者であることを知りながら交際を続けているということで、どちらか一方、あるいは両方が不倫関係にあるということです。

そして、内縁関係なら一定の法律の保護はありますが、愛人関係に関しては、法律の保護は一切ないということをしっかり覚えておいてください。

2.内縁の妻(夫)が相続できる唯一のもの

唯一、内縁関係の場合でも相続を認められているものがあります。

それは、賃借権(ちんしゃくけん)です。賃借権とは、賃貸借契約に基づき、賃借人が契約の目的物を使用する権利のことです。

ケーススタディ

男性が内縁の妻と暮らすためにアパートを借りていました。この場合、夫が亡くなった場合、アパートの賃借権はどうなるのでしょうか?

答えは、夫が亡くなっても内縁の妻はそのアパートに住み続けることができます。これは「たとえ内縁の妻であっても、一緒に暮らしていた場所を奪うことはできない」という観点に立っています。

逆にいうと、もし夫に内縁の妻が居て、アパートを借りて居た場合、結婚の妻であっても相続することはできないため注意が必要です。

3.内縁者が相続を受け取れる方法

内縁関係の妻には、相続権はないと、何度も書いてきました。しかし、内縁関係であっても、(賃借権だけでなく)特別に相続を受けられる場合があります。

その方法は2種類で

  1. 特別縁故者(とくべつえんこしゃ)になる場合
  2. 遺言書で相続を受け取るよう書いていた場合

です。

1.特別縁故者になる

特別縁故者とは

特別縁故者とはどういう人のことでしょうか?

これは、相続人以外で、被相続人と生計を共にしており、被相続人の看護を献身的に行ったなど、被相続人と特別の縁故があった人のことです。

特別縁故者になると、内縁の妻(夫)であっても「被相続人の法定相続人が一人もいない場合に限り」相続財産を受け取ることができます。

法定相続人が一人もいない場合、つまり「相続人不存在の状態」とは、法定相続人すべてが死亡した場合、または法定相続人全員が相続放棄をした場合を指します。

家庭裁判所での申し立てが必要

気を付けなければならないのが、特別縁故者になるためには、家庭裁判所に特別縁故者の申し立てをする必要があるということです。

申し立ての時期としては、一般的に10か月以上かかるといわれている相続人不存在が確定してからがいいでしょう。

しかし、家庭裁判所に申し立てを行ったとしても、必ずしも特別縁故者として認められるわけではありませんのでご注意下さい。

手続きについて

相続人不存在が確認され、家庭裁判所に特別縁故者の申し立てを行い、それが認められた場合、相続税の手続きをする必要があります。

特別縁故者だからと言って、通常の相続税申告と異なる特別な手続きがいる訳ではありませんが、下記の2点は、ご留意ください。

  1. 相続税の申告は、財産取得が確定した日から10か月以内に行う必要があります
  2. 特別縁故者は、相続税加算の対象なので、通常の場合の20%増になります

2.遺言書で相続を受け取るよう書いていた

内縁者が特別に相続を受け取れる方法の2つ目は、被相続人が遺言書に「内縁の妻が相続財産を受け取る人物である」と明記する方法です。

遺言書に相続財産を受け取る人物であると明記すれば、法定相続人でなくても、内縁者に限らず、たとえ赤の他人であっても相続財産を受け取ることができます。遺言書は、それほど大きな効力を持っているのです。

「相続財産のすべてを内縁の妻に譲ります」と、適切な方法で書かれている遺言書があれば、原則的にその通りに遺言が執行されます。ただ、遺留分については注意する必要があります。

遺留分減殺請求は、本来持っている権利の一部を取り戻す正当な権利行使で、このことによって、相続人と内縁の妻がもめないように配慮した遺言書を書いておくことが必要でしょう。

内縁者にも相続財産を遺したいと思うなら、事前に内縁者同士で十分話し合っておくことが大切です。

まとめ

今回は、内縁関係にある妻(夫)が相続財産を受け取ることができる方法について、詳しくご説明しました。

内縁の妻だから、遺産を相続できないとあきらめるのではなく、また、亡くなられてからバタバタするのではなく、事前に十分話し合い、準備をしておくことが重要です。

略歴
2004年 金沢大学大学院自然科学研究科修了(理学修士)2015年 税理士事務所開業、起業支援会社設立。税理士法人LRパートナーズ等で法人部門に勤務。専門分野は相続税・法人保険・創業支援・法人保険等。特に創業支援に力を入れており、補助金・助成金・融資等の支援を通じて、年間40社を超える会社の操業に携わる。創業補助金は、毎年、年間30社程度採択実績。
主な取扱分野
相続税、事業承継、M&A、法人保険、創業支援、法人保険、補助金、助成金、融資等支援。